まちの相続相談所

アンケート

あなたはどこにお住まいですか?

  • 豊前市
  • 築上町
  • 上毛町
  • 吉富町
  • みやこ町
  • 中津市
  • 行橋市
  • 苅田町
  • 宇佐市
  • 豊後高田市
  • 田川市
  • 直方市

あなたの地域は

弊所の相談対応可能エリアです。
いつでもご相談ください。

弊所では対応できないエリアです。
ご相談の受付はできませんが、当ホームページに
相続に関しての情報をまとめておりますので、お役立てください。

トップページへ移動する

印刷する項目をお選びください。

遺産分割の進行

遺産分割へ戻る

目次

相続人の範囲の確定

 「誰に分けるのか」すらわからず、遺産を分けることはできません。まずは相続人の範囲を確認します。

 民法で定められている相続人は、以下のとおりです。

民法で定められている相続人の図

「戸籍をどう集めてよいかわからないし、面倒だ。」

 被相続人の、生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて取り寄せ、検討するということが必要です。
 相続人が少ない事案であれば、比較的負担が少ない事例もありますが、私が扱う地方の案件では、相続人が十数名、数十名いるということも珍しくはなく、そのような場合は、戸籍集めだけでも相当の手間暇を要します。
 弁護士は、職務上必要があれば、戸籍の収集をすることができる権限を持っていますから、これらを行うことができます。
 各相続人の住所は、戸籍の附票住民票により特定します。

「どこの馬の骨かわからない養子がいる。相続人と認めるしかないのか。」

 そんなお悩みは、ありませんか。
 相続人のなかに養子がいる場合、その養子縁組は無効などとして、その者が相続人にあたるか否かが争われるなどすることがあります(遺産分割の前提問題として、家庭裁判所において、養子縁組無効確認訴訟により解決します。)。真に縁組意思が認められるかが争点となります。
 このように、相続人の範囲を確定するにあたって、身分関係や相続人たる地位に関する争いが起こることがあり、これらは別途訴訟等で解決する必要がありますので、注意が必要です。

 なお、巷では、節税目的での養子というのも、よく行われているようです。
 相続税は、遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するとされています。すなわち、相続人が増えれば、基礎控除が増えて、相続税も安くなると考えられます。節税になり得るのです。
 最高裁H29.1.31判決も、節税目的の養子は認められるとしました。
 ただ、血縁の者ではなく、関係性の薄い養子が入り込んでくると、遺産分割で揉めることが多いようにも感じます。私個人としては、あまりおすすめできない方法です。

 その他、相続人の範囲に関する問題として、①婚姻取消、婚姻無効、離婚取消、離婚無効、縁組取消、縁組無効、離縁取消、離縁無効、認知、認知の取消、嫡出否認、親子関係不存在、相続人欠格事由の存否、相続放棄や相続分譲渡の効力を争うもの、包括受遺者であることを争うものなど(紛争が生じたら訴訟により解決)、②推定相続人の廃除及びその取消など(審判で解決)があります。

「相続人の1人が重度の認知症で、協議ができる状態ではない。」

 この場合、その相続人について、成年後見等申立てを検討することになります。

「相続人の1人が行方不明だ。」

 この場合、その相続人について、不在者財産管理人の選任申立て失踪宣告の申立て認定死亡の制度(戸籍法89条、15条)などを検討することになります。

「遺産分割なんて面倒だ。私は何も要らない。」

 相続放棄をするか、相続分の譲渡や相続分の放棄を検討してみましょう。遺産分割への参加を希望しない相続人を離脱させたり、当事者を整理したりすることができます。
 相続分の譲渡を活用すれば、内縁関係にある者や事実上の養子なども遺産分割に参加できるため、これらの者の保護を図るために活用することもできるかもしれません。
 相続分の譲渡は、相続放棄とは異なり、相続人の地位は残ってしまいますので、相続債務は負担することになります(譲受人と重畳的な債務引受。)。相続分の放棄も、同じく、相続債務は負担することになります。債務負担を免れたいという場合は、熟慮期間に注意しながら、相続放棄を検討しましょう。

相続放棄については、こちらをご参照ください。

遺言の存否や解釈の確定

 遺言は、被相続人の意思があらわれたものですから、基本的に、法の規定に優先して、遺言に記された内容の処理をしていくことになります。

 遺言が存在する疑いがある場合、自筆証書遺言等については、被相続人の自宅(タンス、金庫内等)を探したり、普段相談していた弁護士、税理士等に尋ねてみるとよいでしょう。自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で検認の手続が必要になりますので、その場で封印を解くなどは控えるべきです。
 公正証書遺言については、日本公証人連合会において、全国的に、公正証書遺言を作成した公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等をコンピュータで管理しているので、被相続人の死亡後に限られますが、相続人等の利害関係人が、公証人を通じて、すぐに調べることが可能です。

「母がこんな遺言を遺すわけがない。遺言の内容を争いたい。」

 そんなお悩みは、ありませんか。
 遺言の有効性等を争う場合、遺産分割の前提問題として、地方裁判所において、遺言無効確認訴訟を提起するなどして解決する必要があります。
 たとえば、頻出する事例として、被相続人が、重度の認知症で、そもそも意思表示ができなかったという場合、遺言能力を争うことになるでしょう。診断書・カルテなどの医証や看護・介護記録などを収集し、客観的に、被相続人が遺言するに足りる能力があったかを論証していくことになります。
 この点、公正証書遺言の場合、公証人が一応遺言者の状態を確認して作成しているではないかと反論されることがあります。しかし、公証人は、「遺言者の遺言能力が存在しないことが明らかな場合」は、拒絶の正当事由(公証人法3条)がありますが、それ以外では、作成の義務がありますから、一見して明らかな場合でなければ、遺言能力について厳密に検討するということは、ありません。そのため、有効な反論とは言い難いところがあります。ただし、一方で、公証人は、「本人の事理を弁識する能力に疑義があるときは、遺言の有効性が訴訟や遺産分割審判で争われた場合の証拠の保全のために、診断書等の提出を求めて証書を原本とともに保存し、又は本人の状況等の要領を録取した書面を証書の原本とともに保存するものとする。」(平成12年3月13日付法務省民事局通達)とされていますから、公証人から得た情報を基に主張を組み立てることも必要な場合があると思います。

 その他、自筆証書遺言の場合、その方式が厳格に定められていますので、方式違背の無効事由がないかの検討も重要になってきます。先般、相続法改正により、財産目録部分について、自書ではなくエクセル等での作成も認められるようになりましたが(目録の毎葉に署名・押印は必要です。)、依然として、この目録部分を除いては、基本的に全文自書が求められ、日付の記載、氏名の自書、押印、適正な加除訂正がなされていなければいけないとされており、注意しておかなければならないでしょう。

「不倫相手が、遺産を持っていくなんて、おかしい。」

 そんなお悩みは、ありませんか。
 一般の事件では、いわゆる一般条項をいきなり用いると、筋がよくないなどと言われることもありますが、こと遺言無効確認訴訟に関しては、事案により、公序良俗違反(民法90条)を、正面から問題にすることもあります。
 有名な例では、遺言者と不倫関係にある者への遺贈の効力が問題になりました。この点、最判S61.11.20は、事案の解決としては公序良俗に反しないとしていますが、遺贈が不倫関係の維持継続を目的にするものであり、女性の生活を保全するものではなく、相続人の生活の基盤を脅かす場合は、公序良俗違反となる余地が認められています。
 意思表示に関する規定(錯誤無効、詐欺取消等)の検討、上述の公序良俗無効の検討など、多角的な視点で、遺言の有効性を検討する必要があるでしょう。

 そもそも、生前に、適切な遺言づくりをしたいという方は、こちらをご参照ください。

「他の相続人が、遺言の内容について、揚げ足をとるようなことばかり言ってくる。どうにかならないか。」

 遺言の存在に争いはなくとも、その読み方、解釈に争いがある場合もあります。
 最高裁の判例を参考に、遺言解釈の準則をまとめると、以下のとおりです。

  1. 遺言書の文言を形式的に判断せず、遺言者の真意を汲み取る必要がある(最高裁S58.3.18判決)。
  2. 遺言書の記載自体から真意を合理的に解釈できる場合は、その解釈を優先させなければならない(最高裁H13.3.13)。
  3. 遺言書の記載自体から遺言者の意思が合理的に解釈できない場合は、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情、遺言者の置かれていた状況などを考慮して、遺言者の真意を解釈すべきである(最高裁H5.1.19)。

 たとえば、「相続人Xは、Xが住んでいる家を相続する。」という遺言があったとします。遺言書には「家」としか記載がないので、Xが遺言で取得できるのは、建物だけであって、敷地は遺産分割の対象になる、という反論は認められるでしょうか。①②建物だけ相続させ、敷地は遺産分割で協議せよというのは、明らかに被相続人の合理的意思に反するでしょう。そのことは、遺言書の記載自体から明らかと言えます。その他の背景事情を考慮するまでもありません。むしろ、その他の事情(揚げ足(?))を考慮してはいけないのです。

 難しい事案になれば、きちんと判例の考え方にのっとりながら、文言解釈を軸にしつつ、場合によっては背景事情等もよく検討して、しっかりとした主張を組み立てていく必要があるでしょう。

遺産の範囲の確定

 以下のような財産を検討することになるでしょう。【  】内は、特に調査が必要と思われる資料や取得のための手続を示しています。

  • 不動産(土地、建物)【←登記(共同担保目録も検討)、名寄帳、公図、住宅地図など】
  • 預貯金(最高裁H28.12.19決定により判例変更。不可分債権。)【←残高証明書、取引履歴など】
  • 現金
  • 自動車
  • 生命保険金(被相続人が受取人のものに限る)【←保険証券、郵送物、生命保険協会への弁護士会照会など】
  • 株式
  • 国債
  • 社債
  • 投資信託
  • 不動産上の権利(賃借権、抵当権など)
  • ゴルフ会員権(一部例外あり)
  • 電話加入権
  • その他債権(売掛金、貸付金、損害賠償請求権など)
  • その他動産(貴金属、骨董品、家財道具など)

 相続により取得した遺産であり、相続時にも存在し、分割時にも存在する、未分割の、積極財産が、遺産分割の対象になります。これを満たさないものは、法的には、対象財産と認められず、審判の際には、そのような前提で、判断がなされることになります(ただし、合意により協議対象に含めて調停を進めることも多いです。)。
 △は、遺産ではないが、合意により調停・審判の対象にできるもの、×は、遺産ではなく、合意により調停の対象にはできるものの、審判の対象にはならないものを示しています。

  • 可分債権
  • 遺産収益(相続後に遺産から生じた賃料等)
  • 代償財産(不動産の売却代金等)(最高裁S52.9.19)
  • 生命保険金(被相続人以外が受取人のもの)
  • 死亡退職金・埋葬料
  • 遺族給付
  • 香典
  • 使途不明金
  • 遺産管理費用(固定資産税、火災保険料、地代・家賃、修繕費など)
  • 可分債務・連帯債務
  • 保証債務
  • 祭祀財産(系譜、祭具、墳墓など)
  • 遺体・遺骨
  • 被相続人のみに帰属する権利(一身専属権)

 たとえば、生命保険金は、みなし相続財産として、課税の対象になりますが、遺産ではありません。税法は、担税力という観点から、課税対象の範囲を画しているのに対し、民法は、適切公正な遺産の分割という観点から、遺産の範囲を画しているため、両者に違いが生じているのです。

 マイナスの借金などはどうでしょうか。
 債務(可分債権)については、各相続人が、法定相続分に応じ、当然に(遺産分割協議や調停を経る必要なく)これらを承継すると理解されています。
 借金などは、相続人ら(債務者ら)だけではなく、相続人らとは別に、債権者が登場します。債権者から見れば、相続という事情、そこで内部的にどのような話がされているかなどについては、与り知らぬ事情であって、債権者のことも考えなければならないという発想も持ちながら、検討をする必要があるでしょう。

「相続人の1人が、何の資料もなく、使途不明金や被相続人からの借金の存在ばかりを主張して、協議が一向に進まない。」

 そんなお悩みは、ありませんか。
 遺産分割調停や協議が長期化する原因は、多くの場合、使途不明金問題や、生前の被相続人からの借金などの問題です。これらを対象財産ではないとして、協議から外してしまえば、早期に解決することも可能です。
 さらに、具体的な相続分はあまりなさそうという場合も、遺産ではなく、可分債権として、(具体的な相続分ではなく)法定相続分で当然に承継すると考えれば、その者の取得分が増える場合もあるかもしれません。公平な解決という観点での検討を害さない限度で、このような検討もなされてよいのではないかと思われます。

「私名義の預金が、実質は被相続人の遺産だと主張されていて困っている。」

 そのようなお悩みは、ありませんか。
 遺産の範囲について、争いが生じた場合、協議・調停の前提問題として、地方裁判所において、遺産確認の訴えを提起して、この部分の問題を解決することになります。
 「預金者は誰か」という問題については、定期預金では、お金の動きが頻繁にあるわけではないため、実質的なお金の出所に着目して判断されるのに対し、普通預金では、日々お金の出し入れがあるため、お金の出所に着目して判断することが難しく、預金名義人や実質的な預金の管理者等を参考に、契約解釈していくことになると思います。

 なお、税務的には、いわゆる「名義預金」の問題もあります。税務当局との関係で、預金が遺産なのかどうかが問題になる局面です。

 よくある例としては、専業主婦が自分の名義でへそくりをしており、自分の名義であるから夫の死後に遺産として申告していなかったところ、税務当局から、「専業主婦なのにこんなに預金があるのはおかしい」と指摘され、「夫の稼ぎを妻が預かって管理していた夫の財産」とみなされ、課税されてしまうという事例です。

 配偶者は、法的相続分、又は1億6000万円までの遺産については相続税が課されないという、配偶者控除が認められています。しかし、今回の事例では、「夫の遺産を隠した」として、この控除が受けられなくなる可能性があります。さらに、重加算税などの対象にもなり得て、後に思ってもいないような税金を課されることもあります。怖いですね。
 疑わしい預金については、名義にかかわらず、控除を受けるためにも、遺産として申告しておいた方が無難かもしれません。

「遺産分割もしていないのに、長男が、遺産に含まれる賃貸物件の賃料を独り占めしている。私にも取り分があるのではないか。

 そのようなお悩みは、ありませんか。
 いわゆる遺産収益(相続開始後の賃料、配当金等)の問題の1つです。
 相続開始後の賃料は、相続時には存在しない、あくまで相続後の話ですから、遺産ではないと理解されています。ですので、本来は、遺産分割とは別個に、地方裁判所で、不当利得返還請求等により解決すべき事柄です。この場合、賃料から差し引かれるべき費用(固定資産税等)について争いになることが多いでしょう。

 各共同相続人が、その相続分に応じて、分割単独債権として確定的に取得するものと解されていますから(最高裁H17.9.8決定)、これを前提に、相手方に請求していくことになります。本来訴訟事項ですが、当事者の合意により、協議・調停のなかで話合いをすることとし、解決を図ることも多いです。

遺産の評価

 遺産の評価は、遺産分割時を基準にして行います(時価)。
 ただし、特別受益・特別寄与が問題になる場合、これらについては、相続開始時を基準に評価します。

 しかし、時価といっても、預金のように1円単位で金額を特定できるものであればともかく、不動産や非上場株式など、その金額の確定は非常に難しいです。

「不動産はどう評価すればよいか。」

 おおむね、以下のいずれかの方法を用いることに合意して、計算をすることが多いようです。

  1. 固定資産税評価額を時価とする。
  2. 路線価価格をもって時価とする。
  3. 建物固定資産で評価し、土地は以下の計算式で時価とする。
    • 固定資産税評価額÷0.7
    • 路線価×1.25

(ただし、都心のマンションなどは、固定資産税評価額等よりも、かなり高額になっている事案等もあるため、参考にならない場合もあります。)

 不動産鑑定士である家事調停委員から不動産の評価について意見聴取し、これを参考に評価合意をすることもあるようです。

 少しでも自分に有利にしようと、当事者が各々、業者に査定を依頼することもあります。この査定内容で合意ができればよいですが、合意ができないと、結局、最後は、裁判所鑑定により解決せざるを得なくなる場合があります。

 実務では、基本的に、裁判所が価格を決めるということはしません。不動産の評価に合意をするか、合意ができなければ裁判所鑑定を実施してその金額を評価額とするか、ということになります。
 鑑定には、少なくとも数十万円が必要になり、場合によっては数百万円かかることもあり得ないわけではないので、早期解決を目指し、かつ、余分な出費を抑えるという観点から、できる限り評価合意を目指す方が賢明と考えています。

「借地権負担付の土地(底地)はどう評価すればよいか。」

借地権負担付の土地の価格=更地価格-(更地価格×借地権割合)

ここでいう借地権割合は、一般的に更地価格の60%~80%程度であり、路線価図に記載された値を参考にします。

「使用借権負担付土地の価格はどう評価すればよいか。」

使用借権負担付の土地の価格=更地価格-(更地価格×使用借権割合)

非堅固建物の場合、更地価格に10~20%を掛け、堅固建物の場合、更地価格に20~30%を掛けることが多いようです。

「貸借物件は、将来賃料を生み出すから、将来性を評価すべきではないのか。」

 もちろん、収益物件だからとして、家賃の収益性を評価して、不動産の評価を増す考え方はあります。
 ただし、一方で、自分が使えないのだから、評価を減じるべきだという考え方もあります(税務上、貸家は借家権減価という制度もあります。)。
 どちらの考え方もありますので、評価増も評価減もしないで計算するということも多いようです。このように考えて協議した方が、早期適切な解決にもつながるでしょう。

「被相続人と同居していた妻が、被相続人の死後も建物に住んでいる。居住の利益を、建物の時価から差し引くべきではないか。」

 共同相続人の1人が、相続開始前から、遺産の建物で被相続人の許諾のもと同居していたときは、特段の事情のない限り、被相続人が、その相続人に対し、相続開始時から遺産分割時までの期間、その建物をタダで貸す契約(使用貸借契約)が成立していると考えられています(最高裁H8.12.17判決)。
 そうすると、この居住の利益分は、建物の時価から差し引かれるべきようにも思いますが、裁判例は、肯定例も否定例もあるようです。この点が問題になった際は、事案に応じて、説得的な論証を考える必要が出てくると思われます。

「同族会社の株の評価をどうすればよいか。」

 上場株式の評価は比較的容易ですが、非上場株式の評価は非常に難しいです。
 相続税申告書の価格を参考に、評価合意を目指したいところですが、どうしても合意が得られない場合は、裁判所鑑定(公認会計士等による鑑定)が必要になるでしょう。
 しかし、このような株式の評価は、非常に高額になることもありますから、評価合意をした方が無難です。
 もし、やむを得ず、鑑定をする際には、純資産方式、配当還元方式、類似業種比準方式、収益還元方式、混合方式など、いくつかある方法のなかで、事案において適切なものを採用しながら、評価をしていくことになるでしょう。

 他にも無数の論点がありますが、遺産の範囲を確定し、その評価(金額)も確定させた上、遺産目録を完成させ、次の分割方法の調整に進むことになります。

 なお、調停がまとまらない場合に、当事者より、審判により決してほしいという要望がなされることもありますが、実務では、少なくとも相続人の範囲・遺産の範囲・遺産の評価ができていないと、審判は出せないという扱いが多いのではないかと思います。
 それでも審判に固執すると、場合によっては、「調停をしない措置」を取られ、強制的に調停が終了してしまうということもあるようです(不服申立はできない。)。困ったらとにかく審判で判断してもらえばよいというわけにもいきませんから、この点よく気を付けておく必要があります。

特別受益・特別寄与(具体的相続分)の検討

 具体的な相続分を計算するにあたり、事情により、ある相続人が遺産の前渡しを受けていると評価できるようだという場合、特別受益の検討をします。

 改正前相続法においては、遺産の維持・増加のため特別の寄与をした者の取り分を多くできないか、特別寄与を検討していきます。
 改正後相続法においては、特別寄与料請求権に制度が変わりましたので、別途これを検討することになりましょう。

特別受益については、こちらをご参照ください。
特別寄与については、こちらをご参照ください。

遺産分割方法の決定

 ここまできて、ようやく、誰がどの遺産を取得するか、その割り振りを決めていくことになります。
 長い道のりのようですが、皆が都合の良い主張を展開することにより、どんどん協議が長期化していくのが通例ですから、結果的に、このようなステップを踏むことが、早期適切な解決を図る近道になります。

 法的には、分割方法として、以下の種類があり、以下の順番で検討していくのがよいとされています。

     
  1. 現物分割
  2.  
  3. 代償分割
  4.  
  5. 換価分割
  6.  
  7. 共有分割

 実務では、ほとんどの場合、現物分割代償分割を組み合わせて解決することが多いのではないでしょうか。つまり、不動産などの現物は誰かの単独所有という形で割り振った上、相続人間で取得につき不公平が生じてしまう分については、代償金の支払いで調整するという方法によるとよいでしょう。この場合、代償金の支払いの原資となり得る、現金・預金の取得分がそれなりにあればよいですが、なければ、代償金を支払うとされる人の資力が問題になるでしょう。

 積極的な不動産の取得希望者もおらず、代償金の支払いにも不安がある場合などは、遺産を換価(任意売却等)して、手数料等を差し引いた残額を皆で分けるという方法を採ることもあります(換価分割)。
 なお、この場合は、既に検討した、遺産の評価のステップが不要になると思われますから、不動産を取得希望か換価希望かという意向は、当初より予め確認しておくとよいかもしれません。

 不動産等、共有になると、全員の同意がないと処分ができないなど、不自由が大きいですし、共有状態の解消は、結局、地方裁判所における共有物分割請求によることになって、ただ紛争を先送りするだけになりますから、共有分割はできる限り避けるべきでしょう。

 遺産分割方法まで決定できたら、成立となります。
 協議においても調停においても、しっかり条項を組んで、書面にしたためていきましょう。話し合った内容が、きちんと書面にあらわれているかといった点や、付随して税務上の問題はないかなど、改めて検討ができるという意味で、最後まで弁護士がチェックすることにつき、メリットを感じていただけるのではないかと思われます。
 条項を作成するにあたっては、もし、新たに遺産が発見された場合はどうするのかなど、確認できている遺産をただ分けるだけの条項にとどまらず、工夫によりさまざま条項を検討することができます。

こちらから、別のページをお選びいただけます

相続前
相続後

どんなお悩みをお持ちですか?

あなたの地域は

弊所の相談対応可能エリアです。
いつでもご相談ください。

弊所では対応できないエリアです。
ご相談の受付はできませんが、当ホームページに
相続に関しての情報をまとめておりますので、お役立てください。

トップページへ移動する
もう一度、選択する