「借金は引き継ぎたくない。プラスの財産があるなら引き継ぎたい。」
そんなお悩みは、ありませんか。
この場合、限定承認という方法があります。限定承認とは、相続人が被相続人の遺した積極財産の範囲内で消極財産を負担することを内容とする相続の承認をいいます。
要は、借金を返して、プラス財産が余った時だけ財産を取得することができ、借金だけ残っても借金は引き継がないということも可能ということです。
不動産を限定承認で相続した場合、不動産相当額の借金を弁済すれば、不動産を手元に残すことも可能です。相続した不動産が競売にかけられた場合にその不動産を優先的に購入する「先買権」を行使できるのも特徴といえます。
借金もあるようだが、不動産を守りたいというニーズがある事案では、検討の余地があるかもしれません。
一見、便利そうな制度ですが、実のところ、あまり利用されていません。相続人全員で申述しなければならず、熟慮期間も短く、なかなか上手くいかない。公告費用、不動産の場合には鑑定費用等などがかかり、時間がかかること、一定の費用がかかることも、その理由のようです。
さらに、限定承認の場合、税務上の注意点があります。
遺産の中に不動産が含まれている場合は、要注意です。被相続人から相続人への相続財産の時価による譲渡があったとみなされ、含み益に譲渡所得税が課税されます。
純確定申告(4か月以内)が必要になりますし、居住用不動産に関する相続税の特例(小規模宅地等の特例)(3000万円の控除)も利用できません。
要は、予想外の時期に、余計な課税がされる可能性があり、手続も面倒ということです。利用するかどうか、よく検討が必要です。
私個人としては、たとえば、借金は継ぎたくないが、どうしても守りたい不動産があるというような事案を除いて、あまり積極的にはおすすめはしていません。
手続を検討したいという場合は、複雑な手続ですから、弁護士に依頼を検討してもよいと思います。