遺言書
目次
遺言書とは?
故人が、生前、自分の死後に関する希望を遺すことを、遺言と言います。
被相続人の遺志を尊重しなければなりませんから、基本的に、相続制度の定めに優先して、遺言書の内容に従います(遺留分など一部の制度に関しては別です。)。
大事なご遺志ですし、故人が亡くなってからだと確認もとれないので、ご遺志を明確にするため、書面で遺すことが必要とされています。
方式なども厳格に定められていて、注意が必要です。家族で揉めないようにと遺言を遺したはずなのに、内容が明確でなかったり、方式に不備があったりして、後から、遺言が有効か無効かの争いを生じさせることがあります。そのようなことになっては、本末転倒です。あなたのご遺志をしっかりとのこしていくため、弁護士がお手伝いできます。
どんな遺志をのこせるか
遺言で遺せる内容は、法律で決まっています(遺言事項法定主義)。
以下のような事項について、故人のご遺志をのこせます。
財産に関する遺言事項
- 祭祀承継者の指定
- 相続分の指定・指定の委託
- 遺産分割方法の指定・指定の委託
- 特別受益の持戻しの免除
- 相続人相互の担保責任の指定
- 遺留分減殺方法の指定
身分関係に関する遺言事項
- 遺言認知
- 未成年後見人の指定・未成年後見監督人の指定
- 推定相続人の遺言廃除・取消し
遺言執行に関する遺言事項
- 遺言執行者の指定・指定の委託
民法以外の特別法で規定されている事項
- 一般財団法人の設立・財産の拠出
- 生命保険受取人の変更
- 信託の設定
なお、改正前相続法に明文の規定はありませんが、相続させる旨の遺言も、遺言として認められています(最高裁H3.4.19判決)。判例の事案では、遺産分割方法の指定であって、かつ、特別の事情のない限り、何らの行為を要せず、被相続人死亡時、直ちに、当該遺産が当該相続人に相続により承継されると解されました(物権的効力)。遺贈制度の使い勝手が悪かったため、実務的に普及していた相続させる旨の遺言を追認する判例といえますが、物権的効力まで認めるのはやり過ぎではないかという意見があったり、さまざま議論がありました。
こうした議論を受けて、立法的な解決を図るため、改正後相続法では、「特定財産承継遺言」として、明文の規定ができました。
これらの事項以外を定めても、その部分に、法的な効力はありません。付言事項と言われています。
- 葬式の方法
- 婚姻や養子縁組の指定
- 家族間の介護や扶養の方法
- 遺族への希望(家族仲良く、遺留分減殺請求をしない等)
- 家訓
このような事項を遺言書にしたためることにより、遺言者の合理的意思を推し量り、解釈の指針とすることができます。これにより、無用な紛争を防止するという効用もあるため、付言事項は、法的効力の有無にかかわらず、実務上、有効活用されていると言えるでしょう。
どんな方法で遺せるのか
実務上、よく用いられるのは、自筆証書遺言と公正証書遺言でしょう。
両者のメリット・デメリットを見てみます。
自筆証書遺言
- 故人が直接書くものです。費用は生じません。
- 故人が好きな時に書き直せます。
- 不備があると、無効になる可能性があります。
- 紛失のおそれがあります。
- 死後発見されない可能性があります。
- 遺言書の筆跡が本人のものかなど、争いになることがあります。
- 検認手続が必要になります。
公正証書遺言
- 公証役場に保管されるため、第三者によるすり換え、破棄などの心配がありません。
- 公証人が作成するため、方式などについては、遺言の有効性が担保されます。
- 検認手続が不要です。
- 公証役場で、遺言書があるかどうか、検索できます。
- 手数料が発生します。
- 公証役場は、相続人からの申し出がない限り、遺言を公開しません。相続人が遺言の存在を知らないと、遺言が執行されずに、相続手続が終わる場合もあります。
- 遺言の内容に踏み込んでアドバイスしてくれるわけではありません。
- 遺言書の書き直しや修正・追加などの手続が面倒です。
遺言書については、自分で、あるいは公証人に相談するだけで、作成自体は可能です。幣所では、単に作成するだけでなく、専門家の観点から、後に生じ得るトラブルの可能性を考慮して検討したり、ご依頼者様のご遺志を的確に反映できるよう内容をご提案差し上げたり、場合によっては相続税等のことも考えて総合的に検討の上、提案ベースの遺言書作成のサービスをご提供できます。完成度の高い遺言書が作成できたと、ご依頼者様に喜んでいただけましたら、望外の喜びです。
どのような要件を充たす必要があるのか
遺言は、法律上、厳格に方式が定められており、無効にならないよう、注意が必要です。
以下のような要件を充たす必要があります。
全遺言に共通の有効要件
- 法定遺言事項に該当する。
- 遺言能力がある。
- 遺言内容が公序良俗に違反しない。
- 共同遺言になっていない。
- 遺言撤回がない。
- 遺言内容が特定できる。
- 錯誤無効・詐欺取消・遺言意思の欠如がない。
自筆証書遺言の有効要件
- 全文自書(改正相続法で一部緩和あり。)
- 日付の記載
- 氏名の自書
- 押印
- 適切な加除訂正
公正証書遺言の有効要件
- 証人2人以上の立ち合いがある。
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する。
- 公証人の筆記・読み聞かせ又は閲覧
- 遺言者及び承認が筆記が正確であることを承認し、署名押印する。
- 公証人が、適式な方法に従って作成されたことを付記し、署名押印する。
- 聴覚・言語機能障がい者の特則の遵守
自筆証書遺言については、改正相続法により、方式の緩和がなされました。全文自書の原則は、自筆証書遺言の目録には適用されないことになっています。目録に限りですが、たとえばパソコンで入力したものをプリントアウトする、登記事項証明書や預貯金通帳をコピーして相続財産の目録とする、他人に代筆してもらうということも認められるようになります。
ただし、遺産目録の取り換えがあったなどといった訴訟も増えることが予想され、今後の実務の動向に注目していく必要がありそうです。
遺言執行者とは
遺言をしたためても、それにより財産の名義が変わっていくわけではありません。遺言の内容を「実現」するために、さまざまな手続が必要になります。しかし、「争族」に巻き込まれるのを嫌がる金融機関など、なかなか手続に応じてもらえない場合もあります。対外的にも、遺言内容を実現する者として定められたものがいれば、各種手続もスムーズにいくでしょう。そんな役割を担うのが遺言執行者です。遺言で定めることができます。
遺言執行者を定めるメリット
- 相続人全員の協力を得る必要がなくなり、金融機関や相続登記等の手続がスムーズになります。特に、相続人以外の者に遺贈するような場合は、相続人の協力が得られにくいことも多く、遺言執行者選任により実現可能になります。
- 相続人によって不当に第三者に対する譲渡が行われたような場合にも、遺言執行者がある場合、相続人の処分行為は対抗問題とならず、絶対的無効になります。そのため、遺言で指定された者が確実に遺産を取得できるでしょう。
遺言執行の流れ
なお、改正前相続法は、遺言執行者が広範な権限をもつことはわかるが、その範囲が不明確な文言になっていて、相続人間とトラブルになるケースもあったため、遺言執行者の権限・地位を明確化し、遺言執行者は、「遺言の内容を実現するため」に権限を持つと明文化されました。遺言執行者の権限は、遺言の内容を実現するための行為か否かを基準に判断すればよいと分かるようになります。
その他、これまで容易に認められなかった遺言執行者の復任権が認められるようになりました。これにより、遺言執行者として指定された者が、手続を行うにあたりより適切と思われる専門家に外注することも可能になるでしょう。
新たな遺言の保管制度の創設
自筆証書遺言を、遺言者自らが保管することから生じる偽造・変造などの不都合を回避するため、改正相続法により、自筆証書遺言を、法務局で保管してもらうことが可能になりました。
相続法改正の一環として、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が制定されたのです。
保管後は、不測の事態に備えて、遺言書を、データ化して管理します。
遺言者は、いつでも、遺言書保管官に対して、当該遺言書の閲覧請求が可能です。
遺言者が死亡した後、相続人は、「遺言書情報証明書」(データ化された内容も含めてわかる証書)を交付するよう請求ができますし.遺言書の閲覧の請求もできます。
相続人に限らず、誰でも、「遺言書保管事実証明書」(遺言書に記載されている作成の年月日、遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号が記載された証書)を交付するよう請求できます。
公正証書遺言における、いわゆる「遺言検索」と類似の機能を持つことになるわけですね。
まとめ
遺言書というものを作成できるという程度のことは、既に認知されてきていると思います。しかし、実際、遺言を遺している方というのは、それほど多くはないようです。
たとえば、遺言のセミナーなどに参加すると、たくさんの方が聞きに来られています。みなさん、必ず「死」は訪れるのですから、相続・遺言ということは、気になっているのでしょう。
いざ、遺言を書いてみようと思っても、どう書いていいかわからない、書いてみたけどこれで本当に大丈夫だろうか、などなど、悩みは尽きないことでしょう。この記事で記載している遺言に関する情報の多さに、びっくりしている方もおられるかもしれませんが、確かな知識のもと、しっかりとした遺言書を書こうと思うと、専門家の助力が必要不可欠と考えます。
弁護士と一緒に、あなたのご遺志をどうのこしていくか、検討してみませんか。
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